第2節「一般的定式の諸矛盾」
「資本の一般的定式」について、前回議論してみました。資本とは何か、一般的な概念を提示するべき箇所です。『資本論』Das Kapital という書名で刊行した以上、まさに中心中の中心の概念であるはずです。商品からはじめて、貨幣を導出してきたのも、資本の概念を明確にする下準備だったといってよいでしょう。生産ではなく、市場の観点から、まず資本を規定した点は重要なポイントです。しかし、そのうえで、資本の概念をしっかり打ちたてるには、ただ「資本とは自己増殖する価値の運動体なのだ」と、お経のように繰り返してすますべきではありません。考察は、この規定で終わるのではなく、ここからはじまるのです。「自己」とは何か、「価値増殖」とは何か、「価値の運動体」とは何か、貨幣が資本に「転化」するとはどういうことか、全部平明に答えてゆかなくてはなりません。
…ということで、前回は 転化すなわち変身 Verwandlung, transformation をめぐる、むずかしい話になりました。今回のところは、ある意味では簡単なので、前回の議論に結びつけ、資本の概念を深めてゆきたいと思います。